AR、MR、VRの違いについて

最近、AR(拡張現実感)、MR(複合現実感)、VR(仮想現実)の違いについて解説している以下のような記事を見かける。
VR・AR・MR・SRの違いとは?それぞれの活用方法を紹介
VRやARとどこが違う? MR(複合現実)の仕組みと代表例『Microsoft HoloLens』を解説
総務省 ICTスキル総合習得プログラム(位置情報の活用とxR)

これらの記事や資料の中では、「ARは基本的にスマホを使い、MRはHMDを利用する」といった説明や「ARはユーザの動きに合わせて合成されるCGなどの仮想情報を動的に提示できないが、MRはユーザの動きに合わせてCGなどの仮想情報を動的に提示できる」といったような説明がなされている。基本的には、これらの説明を受け入れるAR、MR、VRの(本物の)専門家はいないと思う。ただ、HoloLensを売っている某巨大企業のエバンジェリストとかいう人が講演で上記のような定義を堂々としているのもあって、間違った定義が広がってしまったんじゃないかと個人的には思っている。

技術の進歩と共に、元々の定義には収まらないケースが出てくるので、基本的には拡大解釈してそれぞれの言葉を使うのは問題ないと思っているけれど、元々の定義を無かったことにして全く異なる定義を上塗りしてしまうようなことはあまり良いことでは無いと思う。

昔ながらのARの定義では、そもそも現状存在しているスマホを使ったARと呼ばれているもののほとんどはARでは無いと思う。というのも、スマホの画面とその外側はシームレスにつながっていることは無く、現実世界と仮想世界の間に断絶が起こっているからだ。こういった問題を解決しようとする研究も存在している。
Approximated User-Perspective Rendering in Tablet-Based Augmented Reality

じゃあ、そもそもAR、MR、VRの違いは何なのかという話については、Milgramが提案したReality-Virtuality Continuumが何だかんだでしっくりくるし、少なくとも学術業界では受け入れられていると思う。Reality-Virtuality Continuumのコンセプトではそれぞれの関係は以下のようになっている。

Real(現実) - AR(拡張現実感) - AV(拡張仮想感) - VR(仮想現実)

このように、Real(現実)とVR(仮想現実)をつなぐ連続体の間の表現としてAR、AVがあり、ARとAVを合わせてMR(複合現実感)と定義している。ということで、MR=AR+AVという風になっており、MRはARを内包していることになっている。で、これで行くと現実と仮想の融合で現実の割合が大きいものをARと呼ぶことになる。また、ARの定義については、Ronald Azumaの以下の論文が引用されることが多い。
A Survey of Augmented Reality

ここでは、ARについて以下のように定義している。
・Combines real and virtual
・Interactive in real time
・Registered in 3-D

「ARはインタラクションがなく、MRはインタラクションがある。HoloLensはインタラクションがあるからMRだ。」みたいな説明もちらほらされているけれど、ARはそもそもインタラクティブなシステムであることが前提となっている。また、「ARはユーザの動きに合わせた情報の提示ができないが、MRはユーザの動きに合わせてリアルタイムで3次元的に位置合わせすることができる」といった説明についても、そもそもARは3次元的な位置合わせを行うことを前提としており、こういった説明も間違ていることが分かる。

(疲れてきたので色々と端折るけれど)ということで、現状、MicrosoftのHoloLensを含め、今MRと呼ばれているもののほとんどはARと言っても良いものばかりに思う。もちろん、MRはARを内包しているのでMRと呼んでおけば間違いではない。ただ、MRとARの違いについての説明が間違っているだけなので、そこだけ今後記事を書く人たちには気を付けて欲しいなと思っている。この分野を作り上げてきた先人達に少しは敬意を払って勉強してから記事を書いたり講演をしてもらいたい。

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